人に仕事をお願いするときに、忘れてはならない5つのこと。

編集の仕事っていうのは、人にお願いをすることばかり。自分で企画を立てて、人様に踊っていただく仕事なわけだから、他の人から依頼されることというのは、ほとんど無い。
そんなわけで「頼む」ばかりで、「頼まれたこと」が無い人が多いため、編集者の中には「頼まれる側」の気持ちがわからない人が少なくない。
おかげさまで、「頼まれる」機会も増えてきて、自信をもらったり、傷ついたり、いろいろしている私なのですが、そういう経験の中で「頼み方の流儀」が、少しずつであるがわかってきた。
私が他の人を見ていて、はたから「ひどいものの頼み方だなー」、と思うのは以下の5つのうち、どれかに当てはまる物の頼み方をしている人。

(1)過剰に(相手のキャパシティを越えた)物事を頼む。
→相手が元気なのか、そうじゃないのか、仕事の手は空いているのかどうか、そういうことを考えないで、自分の都合で物事を頼む人、結構いる。(もちろん、頼まれた側は、受注者の立場なので、自分から断わることはできない)
(2)本来ならば、自分がすべきことまで、相手に押し付ける。
→それはあなた自身の仕事なのでは…、ということまで頼まれると、やる気も無くなる。「こういうことを頼むなら、知っていて当然では!?」ということを勉強しないまま、相手に全部お任せで頼むというのも、この中に入る。
(3)なぜ、その人に頼むのか、よくわからない物事まで、頼む。
→なぜ私に!?
(4)頼んだ後に、頼みごとが完遂された後、即頼んだ物事に対する感想・お礼を言わない。
→頼んだのにもかかわらず、忘れているんやろか…。
(5)頼んだ内容を、理由も無く翻す。
→えーーー、また仕様変更ですかっ!?

こういうことを頻繁にされると、相手の人は心を閉ざしてしまう。「この仕事は私の仕事ではありませんから」といって、お手伝いを避けようとする。組織の中においては、官僚化のはじまりとなりうるし、頼むほうも頼まれるほうも、これでは幸せにはなれない。最悪の場合、何も言わずに、相手はあなたの元から姿を消してしまうかもしれない。これは、仕事を依頼する側の、相手に対する無関心が原因なのだろう。
対価を支払えば、相手は自分の要望に見合った品質のものを、遅滞無く納期までに納品するだろうなんて、甘い考え。それでいて、自分の要望に見合わないものが納品されると、相手に文句を言う。人は、自動販売機ではないのにね。

本来、人はお手伝いするのが好きなはずだ。自分の能力が、相手に喜んでもらえるなんて、こんな嬉しいことは、無いはずなのだ。だけど、いつのまにか、頼まれごとがつらいことになる。
さらに、高度に機能と役割が分化された組織には、そういう相手の心や気持ちまでを考えた仕事させないような、暗黙の了解が横たわっている。自分では決して上記のような仕事の仕方はしたくないと思っていても、環境が許してくれないこともある。そういう仕事の仕方は、人間的じゃないな、と常々思っているのだが。悔しいかな。

相手の気持ちを考えた仕事をさせない真犯人は誰だろう?私たちの仕事から、やさしさや思いやりを奪い取ったのは誰だろう?