コーポレートファイナンス?それって食べれるの?

保田隆明さんと、田中慎一さんのコーポレートファイナンスセミナーに行ってきた。コ[ーポレートファイナンス?それってうまいんか?というレベルの私なのだけれども、業務的には知らないわけにもいかない内容。これまでは、なんとなーく逃げてきたようなジャンルだった。のだけれども、ダイヤモンド社にいる編集者の先輩に、お二人の新しい著書のモニターとして、セミナー参加に白羽の矢をたてていただいたわけ。そこで読者の反応を見て、新しい著書のレベルを設定するのだという。
事前に保田さんの「投資銀行青春白書」を読んでみる。投資銀行に入社したミーハーな女の子が、M&Aの案件をまとめあげるまでの物語をライトな小説調にまとめたもの。投資銀行なんてものの存在すら知らない私だったが、これは2時間くらいで楽に読める内容だったし、M&Aの実務と投資銀行の役割を知るにはうってつけだと思う。欲を言えば、キャラクターのディティールが全然書かれていないのが残念だったか。ミヤビちゃんのビジュアルなんて表紙でしかイメージ喚起できないようになっていたので、もう少しキャラ付けをしたほうが、のめりこんで読めた気が…(ミヤビちゃんが着てるスーツは?化粧品は?顔のパーツは?とかとか)。

で、セミナーのお話。保田さんは、あれだけ噛み砕いて企業財務について執筆されている方だけあって、内容は高度なのだけど、わかりやすかった。私は業務でいろいろな企業の経営者さんとお話をさせていただいているが、それが財務的な理論で裏付けられて、おなかにすとんと落ちた感じがしたのだ。
先般勉強会で発表の機会があったので、仕事を通してなんとなくぼんやり思い描いていた、企業の成長過程というものを図示してみたものがある。

取材してたなかで、人材とか経営者の考え方、というところから企業の成長過程をまとめてみたものなのだけれど、保田さんの話を聞いたら、ではなぜ企業が株式公開を目指すのかだとか、資金調達などの観点などから、このなんとなく考えていたことが、裏付けてもらえたような感じがした。
田中さんの、企業財務の変容(間接金融から直接金融へ)というお話も、結構ツボだった。これまでなんとなく避けていた話が、目からウロコの分かりやすさで理解できるわけ。北越製紙王子製紙の買収問題とかの事例も。

企業財務も、知れば面白いのである。問題は、その知りたい、と思わせるためのとっかかりだ。
セミナーの会場に集まっていたのは、証券会社に内定が出ている学生さんとか、実際に業務でM&Aをやっている方だとか、話の内容は当然のように分かっているような人たちばかり。保田さんや田中さんのブログの読者さんなのだろうが、レベル高いなぁと呆然。私は本当に場違いの人間だったような気がしたんだけれど、そういう、企業財務の土壌がない人間でも、そこそこ知的好奇心がある相手に、「おっ!これなら面白そう」思わず手にとりたくなるような仕掛けを、いかに出版社ができるかどうかでこの本の売れ行きは違ってくるはず。担当編集者さんの手腕に勝手に期待したくなるような内容のセミナーだった。

専門書の出版社の役割は、知識の解放だと思うから。