「ギターを本気で弾く気があるかどうかは、楽器とエフェクターを見ればわかるのよ」

本気でその技術を極めようと思っているかどうか、というのは、ある程度その人の道具を見れば分かる。
そんなことをいつか書いた。高校のときだったか、大学のときだったか、記憶は曖昧なのだけれど。

私は高校・大学時代とバンド活動にのめりこんでいて、その文句は、その時代に出てきたものだったと思う。

田舎の高校生時代。周りに楽器のことを聞くことができる先輩なんていなくて、1本目のギターは、アンプとセットで1万9800円の楽器屋さんのPBだった(カワイのロックーンというストラト型のもの。後輩に借りパクられた)。それでも3年間は使った。エフェクターはZOOMのマルチ。今思えばヘロヘロの音質だったと思うのだけれど、田舎の女子高校生的には頑張っていた、と思う。

2本目のギターは、上京して大学に入ってから。少し情報が入るようになってきた。どうやらメジャーなブランド以外の楽器はあまりウケがよろしくないらしい、という価値観ができてきたころだ。そんで、当時買ったギターがEpiphoneのファイヤーバード。音は難有りだったが、見た目はとってもステキ。(弦の張り方が、通常のものと反対で(普通下からミ・ラ・レ・ソ・シ・ミなんだけど、ファイヤーバードは反対だったの)、かなり慣れるのに四苦八苦した。だけど、値段もそれほど高くなくて、愛用した記憶がある。そのころから、やっとコンパクトエフェクターなるものの存在を知った。で、徐々にそいつらを集め始めて、ちょっぴり音作りというものに興味を持ち出した。

3本目は背伸びして、フェンダーUSAのジャガー。暴れ馬のようなギター。結局乗りこなすことはいまだできていないけれども、ときにものすごく良い音を出す。14万円くらいしたかな。だけどこのころ、自分にギターの音を作る才能は無いと思って、エフェクターはRAT1本、アンプはローランドのジャズコーラスと決めて、あまり遊ぼうとしなかった記憶がある。

今はヤイリのladybirdというコンパクトアコースティックギターを、たまに遊びで弾くくらい。ここに来て、楽器にお金をかける欲望が薄れたことに気付く。

何かの技術をより高めたい、と思う人は、いやおう無しに、道具を乗り換えることになる。

IT関連の道具の乗り換え事情はもっと切実で、OSが変わるたびにPCのスペックが足りなくなったり、バージョンアップに対応しなければならなかったり、やらねばならぬことは目白押しだ。

特に出版業界は、デザイナーのPCのスペック、ソフトのバージョンが、いろいろなところに影響を及ぼしてくる。
さらにそれを出力する印刷所のハード、ソフトの状況、出版社側のPC(MOが見れるとか、見れないとか。イラレとかフォトショが入っているとか入っていないとか)、ネットワークの状況(○メガ以上はメールで送れないとかなんとか)…などなど、変数が恐ろしいほど多くて、「これが一番いい!」といいきることもできないし、「一番いい!」解決法を見つけたところで、WindowsVistaになりました、とか、MacのOSのバージョンが上がって、クオークが使えなくなりました、とかそんなソフトメーカやらOSメーカーの恣意的なバージョンアップによって、やっと「私のもの」と思えたような環境は、あっというまに時代遅れになってしまうこともあるわけ。

とはいえ、時代遅れになったところで全く問題は無いのだけれど。

丁寧に磨き上げられた技術は、ヴィンテージになる。
適当に使い捨てられた技術は、ただのゴミになる。

というだけのことだから。

…と思ったら、出版の技術も、楽器の技術も、同じように思えてきたから面白いなーと思いました、とさ。

(でも一番の問題は、
「もう大学も卒業するし、そんなに長くバンドやる気もないし、
ギターなんて音さえ出ればいいでしょ?」という人が
すちゃらかなギターを持って
(もしくは、最新の動向を知ろうとも全く思わないまま)
バンドの中に混ざっていることである、
ということに気がつきました、最近)