おかえり筋少!〜生きたもん勝ち、笑ったもん勝ち〜

大槻ケンヂ率いるバンド「筋肉少女帯」の再結成ライブに行く。チケット争奪戦、結構すごかったらしいのだけれど、なぜだか見られることになったのだ。(今年はこういうラッキーが多かったな)
私の中で一度大槻ケンヂは終わったアーティストだった。小説もエッセイも、惰性で同じこと書いているようにしか見えなかったし、新しくやっているバンドもいまいちな風。生きるためにもがいていて、それが見苦しく思えたのだ。彼は、若いころ世の中を斜めに見たような表現をたくさんしていた人だったから、そんな彼がもがいているのは、見るに忍びなかった。…ように思っていた。
だから、正直なところあまり、ライブも期待していなかった。でも、生で見るとね、意外とよかったんだわ、これが。紆余曲折あって、バンドが解体して、それが再結成して……ていう前置きはあるんだけど、そういうことを抜きにして、よかった。つまりどういうことかというと、「名曲は色あせない」ってこと。「釈迦」「踊るダメ人間」「日本インド化計画」、いずれも甲乙つけがたい名曲に、中野サンプラザ中が歓喜に包まれるわけ。名曲と、プレイヤーと、お客さん、それ全てが、幸せオーラを放っているんだよね。それがすごい。(なんかあのエネルギーを、地球の環境保全とかに使えれば、もっと世の中良くなる気がするのだが)。「サボテンとバントライン」「少女の王国」、こういう表現のあり方に、高校時代、私がどれだけ勇気付けられて生きてきたことか。思い出し、心がしっぽりする。
そんなわけで、久々にちょっと羽目を外した感じで「コール・アンド・レスポンス」してきた私なのであった。ロックを聴かない人のために解説すると、アーティストが「いえーい!」って言って、お客が「いえーい!」って言い返すあれ。こう書くとすごく間抜けな感じだけど……。ライブパフォーマンス云々、MC云々、思うところもいろいろあるけれど、いい曲は、いい。それを、会場でこんなにたくさんの人と、共有できるっていうことに、感動を覚える。音楽ってすごいな。隣を見れば、いかにも普通のOLがヘッドバンギングしているではないか。私は2階席でライブを見ていたんだけれど、1階最前列で、金髪の長髪のお姉さんが、髪の毛振り乱しながら、踊り狂っている様子が良く見えて、これにも心打たれる。みんな結構いい年になっているんだけど、すんげー楽しそう。っていうか、私も踊るし。それが楽しい。
みんなでさ「ダーメダメダメダメ人間!」って歌いながらジャンプするってさ、一見正気の沙汰じゃ無いよ。でも、あのころの俺たちにはそのパワーがあったし、今の俺たちにだって、そのパワーはあるんだよ、間違いなく!、となぜか一人称に俺を使いたくなるくらい、熱いライブだったのだ。
中野サンプラザという、まさに「自宅から関東バスで210円でいける場所」でのライブというのも感慨深かった。
オーケンはもがきながら、それでも少しずつ表現者としての幅を広げていて、一度辞めた筋肉少女帯を受け入れられるだけのキャパシティが出てきたから、再結成が可能になったのではないか。最近の著作を読むと、意外とストレートな芸風なんだ。昔のMCは「お前ら笑わせてやるから盛り上がれ〜」ってイメージだったんだけど、今回のライブではこっぱずかしいことを、ちゃんとお礼したりしていたり。はすに構えていたアーティストが、大人になってちゃんと前向きな言葉を伝えられるようになった。そこに僭越ながら、オーケン先生の成長を見た気がするわけなのですよ。
それがどんなに見苦しかろうと、生きていてなんぼ、続けていてなんぼ、笑ってなんぼじゃ。生きてやる、続けてやる、笑ってやる。て、パワーをもらった気持ちがしたよ。