50%ルールと小売業
フリーライターの宮内さんに紹介してもらった本がとてもとてもおもしろい。
- 作者: 梅田望夫
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2006/02/07
- メディア: 新書
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「今までのネット上の技術革新(とビジネスの方法論)はこういう風に読み解けるのか!」と目からウロコが落ちまくる。
この中に、「はてな」という企業(というか、社長の近藤淳也氏)についての
面白い記述があり、とっても「はてな」に興味を持った。
50%の完成度でサービスを出す
似たことがプレジデントの2006年3月20日号、近藤社長インタビューにも書かれていたので引用してみよう。
最近、ブログ上で「新サービスは50%完成したところでリリースする」と語ったところ、思わぬ反響を呼びました。「未完成の商品を出すなんて」と驚かれたんです。「改良の余地を残してサービスをリリースする」という表現にすれば、すんなり納得してもらえたかもしれない。(中略)
一度製品を出したら、しばらくは変えちゃだめ、なんていう決まりはない。特にサーバー型のウェブサービスなんていうのは、手元にプログラムがあるわけですから、ちょっと手を入れれば、いくらでも改良できるわけです。(中略)
つくり手にも想像力の限界がある。
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この話を聞いて、私はイベント会場で商品を販売するときのことを思い出した。
イベントでの物販は「積極的な売り込みができる人」「売込みができない人」の2種類に分かれる。
「売込みができない」人の理論はこうだ。
「そもそも私はこの商品についての正確な知識が無い。
お客さんに何か聞かれたとしても回答することができない。
だから私は、お客さんに不快な思いをさせることになるから、売り込みは極力したくない。」
しかし、そこでイベント販売の楽しさをなんとなく経験で知ってきた私は、
「この人、もったいないことをしているなぁ」と思う。
商品を売る場(サービスを提供する場でも可)は、いつでも本番だ。
練習なんてものはない。来るお客、来るお客に対応する。数をこなすことでしか、お客に対応する能力は上がらない。
ある程度事前に商品知識を仕入れておくことは当然としても、そこに売るべき物があり、お客さんがそれを欲しているのであれば、とにかく売るのが店に立つ者の役目だ。
そこで、お客さんからの叱責や、指摘を受けて、考える。
サービスの仕方を変えてみる。繰り返し試行錯誤する。
それしかよいサービスを追及する方法は無い。
裏返して言えば、店に立つ者は、半身を社会に乗り出して、自分のサービスに対し会社外の人の言葉を聴くことができる立場にいるということだ。
実はこの考え方、Googleやはてなの開発手法と通ずるものがある。
半分しか完成していないサービスをリリースし、ユーザの声を聞きながらアップデートする。
不定形な「サービス」を扱う店舗の店員にこそ、この考え方は適しているのではないだろうか?
メーカーと小売りの大きな違いはここにある。
エンドユーザーに直接開かれた窓を持っているかどうか。
小売りは常にお客の声を聞くことができる場所にいる。
もちろん、その声を、サービスなり商品なりに即反映することができなければ、その声は無駄になってしまうけれども。
スキル、能力でこちこちに固まった、「狭い」自分で勝負するよりも、経験不足、未熟者の自分を「それもまたよし」と納得して、無限に近い大きさの「社会の群集という名の頭脳」を利用する。
そのほうが気が楽だし、アイディアも無限に沸き続けるのではないか。
だから、こう思う。
店でお客に物を売るというのは、きっととっても素敵なことなのだろうって。