生きる謎の前ではみんな些事

本当に、本当にいまさらなのだけれど、最近池田晶子さんの本にうっとりとし続けている。
池田さんは「14歳の哲学」を記された「ものかき」の方である。今年の頭に週刊新潮での連載をまとめた「知ることより考えること」を読んで、そこからずぶずぶとはまっていたのだが、この4月ぐらいに、既に亡くなっていた人であることを知って呆然としていた。(2月に癌で亡くなられていた)。
で、立て続けに、『君自身に還れ―知と信を巡る対話』『人生のほんとう』『人間自身―考えることに終わりなく』と読み続けているのだけれど、全てが全て、すごい。今まで頭の中でぼんやりと考えていたことが、彼女の手を借りて、構造化されていくのが見えるよう。私の体質に彼女の考え方があっていたからなのかもしれないけれど、その筆致は見事としか言いようが無い。すぱっと言い切る。そして微妙に謎の余韻が残る。それがまた味わい深い。
この感覚を、彼女の本を読んでいない人に伝えるのは非常に困難なので、敢えてここでそれをしようとは思わないけれど、哲学的なことに気付くかどうかで、人の生き様というものは大きく左右されるものなのだな、という確信が一段と深まった。
そういうことを考えたことがあるのかないのか、小さな世界で小さな論争ばかり繰り広げている人々のなんと浅はかなことだろう。
いや、当たり前のことに疑問を持たずに生きている人たちや、もしくはその一巡を経た信念を持たぬ人々が、浅はかであるということすら、池田氏の書物を通過することによって、私は感じなくなってしまった。
要するに、興味がなくなったってことだ。

人間自身―考えることに終わりなく

人間自身―考えることに終わりなく

君自身に還れ 知と信を巡る対話

君自身に還れ 知と信を巡る対話

人生のほんとう

人生のほんとう

知ることより考えること

知ることより考えること

それゆえに、本というものの深さを、言葉というものの深さを感じるのだ。